毛玉猫が君を呼ぶ

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 そう思い席を立った矢先に「吉名くん、今日はちょっと飲みに行かないかい」と課長が声をかけてきた。  なんでこんな時に声をかけてくるかな。なんてことは口が裂けても言えない。だからと言って、『行きましょう』と誘いに乗ることも出来ない。ここは勇気をもって断らなくてはいけない。 「あ、すみません課長。一緒に飲みに行きたいのは山々なのですが、今日はどうしても外せない用事がありまして。申し訳ありません」  一樹は頭を下げて、申し訳ないという顔をして演じてみせた。 「そうか。それは残念だが仕方がないな。今日はお疲れ様」  課長はあっさりと引き下がってくれた。珍しいこともあるものだ。ホッと胸を撫で下ろして、そそくさと会社を後にする。 ***
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