毛玉猫が君を呼ぶ

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 電車を乗り継ぎ、自宅の最寄り駅で下車をする。  頭の中は、子猫のことでいっぱいだ。あいつはまだ救いの手を待っているだろうか。見捨てないでとでも口にしそうなあの潤んだ瞳が脳裏に浮かぶ。とんでもない罪を犯してしまったようでおかしくなりそうだ。  もしかしたら、子猫はすでに天国に旅立ってしまったのではないだろうか。そんな思いに囚われてしまう。冷たい雨に打たれて、体温を奪われた子猫が辿る結末はひとつしかない。  ダメだ、ダメだ。嫌な考えは捨てろ。  きっと大丈夫。待っていてくれるはずだ。  公園が見えてきた。  生きていてくれよとの願いを込めて公園へと急ぐ。  あの子猫は捨て猫だったのだろうか。それとも野良猫だったのだろうか。そうだとしたら、母猫とはぐれてしまったということか。そんなことはどっちでもいい。無事でいてくれ。 「猫やーい。いるかぁー」  一樹は公園に入るなり叫んだ。明るい声を張り上げて、心の中の罪悪感をなるべく軽くしようとした。そんなことで沈み込んだ澱が解消されるはずもないのに。  ベンチの下には猫の姿は見当たらなかった。
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