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どこかで隠れているのだろうか。それとも、誰か心優しい人が保護してくれたのだろうか。そうだったらいいのだが。そうだ、きっとそうなんだ。いなくたって気に病むことなんてない。
一樹は念のため公園内を隈なく探した。
それでも子猫を見つけることは出来なかった。
いないということは、やはり誰かが保護してくれたと思っていいのだろうか。
亡くなってしまったとしたら、どこかに亡骸があるはずだし。
馬鹿なことを考えるな。きっとあいつは大丈夫だ。
溜め息を吐き、一樹は帰路についた。
家に着くまでの間、ずっと子猫の姿が頭から離れなかった。鳴き声がした気がして振り返ることも。もちろん、空耳なのだが。
遅刻した方がよかったのではないかという気がしてならない。
これは命の問題だ。
どっちが大切なのか馬鹿でもわかる話だろう。でも、遅刻していたとしたら会社に迷惑をかけていただろう。人としてそれもダメだ。
一樹は頭を掻き毟り喚きたい気分になった。
そんなことが頭の中を巡っているうちに家の前に辿り着いていた。
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