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「でも驚いたな。随分長い間ここにいるけど、面と向かって人間じゃないって指摘されたのは初めてだよ」
「……そうなんですか?」
「うん。気づく人はいても、関わりたいと思う人は少ないだろうからね。どうして僕が人間じゃないってわかった?」
「八年前にもあなたを見かけたことがあって……そのときと全く姿が変わっていなかったから。それにオーラというか、雰囲気が普通とは違うんで……」
「あぁ、そういうことかぁ~。姿を変えないとこういうことになるのか~。でも今のこの姿、結構気に入ってるんだけどなぁ。目立たないイケメンを目指してみたんだけど、ダメだったのか?う~ん」
大きな独り言で悔しそうにする男性。本当に悔しそうで、何を悔しがっているのか理解できない。そんな彼を見ながら、結はもっともな質問を投げかける。
「あの、あなたはいったい何者なんですか?」
「うん?あぁそうだった、自己紹介がまだだったね。僕の名前は黒崎シキ。ただの死神だよ」
「しにがみ……」
最初、結はその単語をうまく飲み込むことができなかった。死神とは、あの死神のことだろうか。本当に実在していたのか?目の前の彼が死神……。自分でも脳が混乱しているのが手に取るように分かった。だがシキは、さも当たり前のことを話すように説明し始めた。
「驚いたかい?でも死神なんて当たり前のように居るんだよね。みなさん気付いていないだけでね。それに死神なんて言っても、今の時代のサラリーマンとほとんど変わらないんだよ。上の言うとおりに仕事をしているだけでさ。もちろん上っていうのは、人間が言うところの天国のことでね、そこが指示してくるんだよ」
「どんな仕事をしているんですか?」
「簡単に言うと、生と死のバランスを見守っているんだ」
「生と死のバランス……?」
「生の数と死の数、どっちが多くても少なくてもいけないんだ。だから死んだ者が成仏せずにこの世にいるのもよくないし、生きている人間が多くなってもいけない。その場合に死神が、死者の成仏を手伝ったり、上が選んだ人間を数減らしのために狩ることもある。それが主な仕事だよ」
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