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結は、このように語るシキの言葉を、ゆっくりと咀嚼し飲み込んでいった。驚いたことに、意外にもすんなりと受け入れている自分がいた。やはり結自身、人と違う力があるから受け入れやすいということもあるだろう。世の中には科学では証明しきれないことがたくさんあることを、身を持って体験している。そういった土壌が、結には備わっていたからだろう。
こうしてあらためてシキを見てみると、やっぱり普通の人間となんら変わらない。これなら気づかれることはほぼ無いだろう。
その死神シキはというと、ニヤニヤしながらこちらを見ているではないか。その視線に気味悪さを覚えた結は、顔が引きつっていくのがわかる。そして気持ち悪い笑みを浮かべたままシキは、嬉しそうに言った。
「そういえば、君の名前を聞いていなかったね」
「あぁ、そうでしたね。私は市川結って言います。高校二年生です」
「高校生か……わかるよ、その制服、近くの公立高校の制服だもんね」
そう言いながら彼は、結の頭のてっぺんからつま先まで視線を這わす。その目には誰が見ても喜びが浮かんで見える。ゾクッとした身震いの後、結は本能的に危険を感じた。そんな身構える結をよそに、シキは恍惚とした表情で語りだす。
「いいよね、その制服。昔ながらのブレザーって感じでさ。ジャケットとスカートが両方紺色。最近はチェックのスカートとか可愛いのがあるけど、やっぱり良いのは王道だよね。
それにしても、日本ほど制服が多くある国はないよね。そう考えると日本で働けているのはラッキーだよ。あぁ制服……なんでこんなにもそそられるんだろうか。そして、さらにうれしいことと言えば、市川さん眼鏡かけてるよね」
「そ、それが何か……?」
「いや、その赤いフレームの眼鏡がいいなぁと思ってね。なんか気の強そうな女性感が出ててさ……制服と眼鏡、うん、なんかいいなぁ。あっ、ちょっとその足元のローファーで踏まれたいかも」
(うわ……この人、ちょっとヤバいかも……)
遠くを見つめ、うっとりと制服を語るシキ。さらにドMな性格も垣間見れて、結がドン引きしたのは言うまでもない。
あの時のことを思い出し、また大きなため息をつく結。するとシキが反応する。
「さっきからため息ばかりついてるけど、どうかしたのかい?」
「いいえ、別に何でもないです」
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