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「そう、それならいいけど」
そう言うとシキは、新聞を読み始めた。本当にマイペースな人である。結は、ため息の原因はあなたですとはさすがに言えず、自分も本を読み始めた。
シキと出会ってから、結はこうしてたびたびこの場所を訪れている。しかし特に何かを話すこともなく、いつも自分たちのしたいことをしている。こうして気を遣うことがないのは良いことなんだろうが、やはりシキとは距離を感じているのも事実である。
だが結はこの距離を埋めたいのかどうなのか、まだ自分の気持ちを理解しかねていた。そんな結だが、はっきりしていることがひとつある。それはここに来る理由である。
すると心を読んだかのように、いいタイミングで、シキは結にこう尋ねてきた。あまり結に関心があるように見えなかった彼でも、やはり気にはなってはいたのだろうか。
「一つ聞きたいんだけど……市川さんはどうしてここに来るんだい?君にとって、ここはあんまり関係ないような場所のように思えるんだけど。まぁ、別に来るなっていう意味じゃないからね。制服が見られるから僕としては嬉しい限りだけど……。本当にただ気になっただけだから」
その質問にどう答えるべきか、結は一瞬悩んだ。そして結は読んでいた本をカバンにしまい、立ち上がるとそのまま入口に向かう。シキはそれを見て、彼女は答えたくないんだなと判断したのか、何も話しかけてこなかった。
結はドアノブに手をかける。ここで彼女は急にシキの方を振り返った。そして無表情でこう告げたのだ。
「私がここに来る理由は……きっとあなたに、私の魂を狩ってほしいからだと思います」
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