始まりの鐘

5/5
前へ
/40ページ
次へ
少女は着物姿のお祖母様に手を引かれて光の中包まれて、消えていった。 「良い子だね。紫乃」 アキは優しく微笑み、紫乃の頭を撫でた 「優しくないわ…。」 世の中は…こんなにも無情な響きがある。 雪華…私は… 「一々霊の相手なんかしてたらキリがないわよ。 日本では若者の死因第1位は自殺。 自殺の理由にはイジメも多い。 一体何人成仏できずに彷徨っていることやら。」 力を使ったため、異様な眠気が襲う。 「そうだね……。 それでも少しの人でも、気づかせてあげる事が大事だと思う。 さて、仕事から帰って疲れた上に力を使って眠いだろう? 早く家に帰って寝ようか。 若者の自殺にこころを痛めてる君を私が抱いて慰めてあげるよ。」 紫乃は突然顔を赤らめ少女みたいな反応をする。 「な、何を言ってるのっ、アキは。寝てもどうせ、私は精神世界に仕事に行くから肉体を抱いてても仕方ないわよっ!」 反応が可愛いなぁとしみじみ思うアキ。 「ああ、そう捉えたんだね、うん。まぁ、いいや。そういうことにしとこうか」 家に到着し、御飯を食べて家事を済ませた後は寝巻きに着替えて布団に潜る。 「やっと寝れるわー、幸せー…って寝れないから離れてくれないかな?アキ。」 アキは紫乃の横で抱くように横たわっていた。 「何故?昔はこうやって泣いてる君を慰めてあげたのに。」 残念そうというよりは愉快そうに微笑むアキ。 「い、今は必要ないの!私はもう強いから大丈夫。」 アキがよいせと布団から離れ、代わりに紫乃が布団に横たわると、眠気が再び襲った。 ああ、あの頃の私、泣いてばかりだったな。 もう私、27歳、かあ。 あの子は中学生だったのかしら。 あの子の制服姿を見て己の高校の時を思い出だす 高校時代… 10年前……
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加