0人が本棚に入れています
本棚に追加
蓮の花が一面に咲き乱れ、風がそよぐ。
青い空は雲がなく動きを微塵も見せない。
1人の少女が静かに泣いていた。
「私は行かなければならない…。」
少女の前に凛とした雰囲気を持つ謎の姿を成す者が突然現れた。
「お前は血縁者からも誰からも愛されず、友と呼べる者が出来てもすぐに去り、孤独の中を生きていくだろう。」
澄んだ声が少女に厳しい言葉を向けた。
長い黒髪首元に一つに結ぶ少女はただ黙って頷く。
「異性の者との縁ある中で、お前はその者達の愛をも拒み役目を全うせねばならぬ。」
朱色の着物を着た少女は不安げな顔を浮かべる。
「この記憶すらも忘れてしまうのだから、そのお役目を果たせるかわからない。」
謎の姿を成す者は優しく諭すように言霊を紡ぐ。
「魂が憶えているよ。これだけは忘れないで…
……………………だ…と…
………こと…を…。」
最初のコメントを投稿しよう!