第2話

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 自室のベッドでぼうっとしていた。まだ昼間だっていうのに、何もする気が湧かなかった。  ただただ、この世界の残酷さを思い返す。現実は不条理だ。身一つで町の外を歩く馬鹿娘は死ななくて、鎧着て町にいた店長が死んでしまったっていうんだから。 「…………葬儀どうするんだろ……」  店長は身寄りがなかったはずだ。一応既婚者で娘が一人いたって聞いた気がするけど、とっくに別れてもう消息も分からないとも聞いた。  それにしても、首がない? 胃がキュッと縮んで痛んだ。魔物ってやつはどこまで最低なんだろう。昨日はタバコすってた店長の顔を食いちぎって、腹の中で溶かしやがったんだろうか。なんでわざわざ、死者の最後の尊厳とも言うべき顔を、よりにもよって顔を奪ったんだろう。  あんまりにもいたたまれない。あんまりにも惨い。一体、あの人が何をしたというんだろう。あまりの理不尽さに世界がグラグラ揺れてるような気さえした。  私の微熱を冷まさせるように、ドアがノックされる。誰? 面倒だ。このまま居留守でもしていよう。そんな私の無気力を、ドアの向こうの女の声が遮った。 「メル、いるんでしょう。開けて。店長のことで、みんな店に集まっているわ」 「…………はぁ」  観念して体を起こす。同じアイス屋台の同僚の声だった。
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