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お淑やかな同僚に連れられ、白日の下を歩いた。何を話したのかまるで覚えていない。
倉庫前はにわかに騒がしかった。滅多に集まることのない同僚たちが、川辺で拾い集めた石のようにまったく不揃いな顔を並べていた。
似ている顔などひとつもない。誰も彼も訳ありで、本当に人種からして違う気がした。私に気づくなり、みんな駆け寄ってくる。
「メルちゃん、店長が……」
「知ってる。私、埋葬士が来た時その場にいたから」
「そう……」
それきり、誰も何も言えなくなる。仕方ないだろう。誰かが死んだ時に何かを出来る人間なんて少ない。そして私たちは、経営者を失った烏合の衆だ。
「……アイス売り……どうなっちゃうんだろう」
それは私も疑問だった。私たちは、みんなして路頭に迷うんだろうか。
「それで……店長の、葬儀のことなんだけど」
「葬儀?」
古参が語り出した内容に、比較的まだ新しかった子が疑問符を浮かべた。古参のほうは、私の次くらいに入ってきて、一時期店長に気があるのではないかという噂もあった子だった。
「ほら、店長って身寄りがないじゃない? だから誰も葬儀をやってくれる人がいないの」
私は口を閉じて黙っている。なんとなく、明るい顔をしたその子が何を言わんとしているか理解してしまったからだ。
「だからね。みんなでお金を出しあって、店長の葬儀をしないかな、って」
みんな黙った。曇った顔を見合わせている。それは地雷だ。アイス売りなんかをやっている私たちに、そんな余裕が有るはずないのだ。
「えっと……ごめん、その。お金が惜しいってわけじゃないんだけど……」
一人、いつもは大声を上げて話す明るい子が、今日に限っては周囲の顔を伺いながらおずおずと手を上げた。
「葬儀って、いくらくらい掛かるもん、なの、かな……」
私は知っている。あの子は、旦那の借金があって本当にお金に困っているのだ。
彼女だけじゃない。みんな、それぞれ自分の生活があるのだ。誰も余裕なんてない。お世話になった店長の葬儀をやって、そのためにその分の借金を背負ってしまうような生活状況なのだ。そもそも、店長がいなくなってしまった今、明日からの仕事もどうなってしまうか分からない。
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