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人は5度死ぬ。
失恋した時、学生でなくなった時、仕事をやめた時。
そして死んだ時と、誰とも関わらなくなった時。
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生まれ故郷はかなり辺鄙な山間の村だった。山の上の方に竜の巣がある、という伝承だけが残された、それ以外に何もない農村。
つまらなかった。退屈で死にそうだった。特に、十代後半に差し掛かっていた私は、大人になるにつれて、毎日毎日農作業ばかり手伝わされる日々に耐えられなくなっていた。
夕暮れの、くたびれたような真っ赤な空と、ぼちぼち帰るっぺかぁなんて言ってるおじさんおばさん連中ばかり見ていた時、疲労も相まってか本当に何もかも投げ出してしまいたくなったものだ。
土で汚れた自分の手のひらを見下ろして、本当に恥ずかしかった。情けなくて仕方なかった。せっかく女の子に生まれたっていうのに、このまま化粧もせずに畑だけいじって家事をさせられて一生を終えるのだろうか。
それはそれでいい人生じゃないか、と幼馴染のボンクラ男が言った。綺麗な服など着なくても十分可愛いじゃないか。化粧なんて嘘っぱちだ、都会女はみんな嘘で塗り固めた嘘っぱちだ。この前も、都会から来たっていう女の子にひどい目に遭わされた。都会なんて嫌いだ。
などとグチグチ女々しい文句を垂れてきたので、私はにっこり笑って殴ってやった。半年ほど置いて、村も出た。もう農作業には耐えられなかった。全員の反対を押し切って、家出するように深夜にこっそりと村を抜けだした。
村を離れ、一人きり夜の草原に辿り着いたら声を上げて走り出した。なんて開放感。私は自由だ。これから都会へ行って、昨日までとは全く違う新しい人生を生きる。
人生一番の星空だった。息が真っ白になるくらいに空気の冷たい夜だったけど、私は本当に幸せだった。
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