第3話

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 堅物そうな埋葬師。名前は知らない。真面目そうな見た目と佇まいだが、人間性はそれほど精錬でもない。どちらかといえば、嫌味なタイプの人間だ。この男とは以前、別の埋葬の現場で出会ったことがある。 「……そうね。さっきはどうも。うちの店長がお世話になりました」  ペコリと素直に頭を下げると、埋葬師はなんだか静かになった。 「……なんだ、あのご遺体の関係者か」 「そうよ。悪い? うちの店長様よ。副業で門兵やってたの」 「悪いことなど何もない。立派に戦って殉死したんだ。笑われることなど何もない」  らしくもない真剣さ。男は皮肉屋であるより前に埋葬師だったらしい。 「そうだね。ありがとう」  熱心な男に埋葬されたようだ。なら安心だろう。けれど、男はどこか確かめるように言ってくる。 「……彼は、魔法使いだったか」 「ええ。いくつかの系統を、それなりに。天才ではないけどベテランだった。アイス売りとしても、魔法使いとしても」 「…………」  よく分からない。何か考えこんでいる。 「……何なの? その辛気臭いローブで黙り込まれるとしんどいんだけど」 「妙な感触だったが、気のせいか……いや、少し調べてみるか」  何か、一人で勝手に納得したらしい。 「……何?」 「いや何も。なるほど。羨ましい限りだな。複数系統の攻撃魔法を使えるだなんて」  言われて、思い出した。この男と出会った時のこと。
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