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そのすぐ後、草の葉をひきずりながら這い寄ってくる液体状の生物に出会って、人生一番の悲鳴を上げたのだけど。
無理もない。土曜の“渡り行列”でもないのに一人で村を出てしまったのだから。事前に用意はしていたし、それなりに必死で鍛錬は行なっていたけれど、生まれて初めて私は村の外の危険性を自分の命で実感したのだ。
四体目を屠った所で、息を切らして座り込む。どうにもこの一帯、あの液状生物が多いようなのだ。次々と這い寄ってくる。そんな生きるか死ぬかの一場面なのに、いよいよ都会に行けるのだと高揚しきっていた私はまったく深く考えていなかったのだ。
そんなことより、初めて見た種類の木に凭れ、見上げた月は魔法のようで。なんて静か。凍りついたガラスの月が、私の道を明るく照らして導いてくれていた。
不思議と力が湧いてきたのだ。それはまるで、泉のように。
――――広域結界。
当時、まったく知識のなかった私は知らなかったのだ。あの日歩いた土地は、すぐ傍にある月見の都によって庇護の結界が張られていたこと。そのお陰で、いくらでも力が湧いてきていたのだということ。そんな素敵な恩寵に守られ、私の一夜限りの一人旅は月見の都に辿り着くまで続いたのだった。
凍えるくらいに寒かったけど、本当に、楽しかった。
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