本当の家族

5/12

219人が本棚に入れています
本棚に追加
/378ページ
「バカなこと? …誰かのためを思って、自分を殺して…身を引くことが、バカなことだって言うの? 私がしていたことは、間違ってるの?」 「そうだ。子供が親の心配などしなくていい。」 「ちょっと…おじさん!!」 浦原が怒って怒鳴る。 でも… 「いいの。浦原達は黙って?」 私はあえて、助けは求めない。 だってこれは、私とこの人の問題なんだから… 「綾香。俺には責任がある。母さんとの約束がある。 お前の事は、父さんが責任を持って育てる。 それが、母さんの望みだ。」 お母さんの望み… この言葉で縛り付けられているこの人は、本当に哀れだ。 「"母さんの望み"ね…。 大人はいつだって、世間体を気にする。 でも、あんたの本心は、そうじゃないでしょ?私のことを邪魔だと思っている。 …違う?」 「………………」 お父さんは、黙ってしまった。 やっぱり… 答えなんて期待してなかった。 それなのに… 心が、痛い。 これ以上ここにいたらどうにかなってしまいそうな気がして、みんなの横を通り過ぎようとしたときだった…。 「…違う。」 「…………え?」 お父さんが、いきなり言った。 「違う。邪魔者だなんて、思っていない。」   "騙されちゃいけない" こんな言葉が、頭をよぎった。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

219人が本棚に入れています
本棚に追加