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その背中を抱きしめ返して、そっと胸を押し返す。いくら人目がいなくてもさすがに大胆すぎる。
「まだ時間あるから大丈夫だ」
二人してベンチに腰掛けると、肌を刺す風が顔を撫でて行く。桐嶋はこの町で大学入試の勉強をすると決めたのだ。秋弘はこの町を出る。離れるのは寂しいけれど、そこには希望もある。
「俺、すぐ会いに行くから」
「馬鹿、お前はちゃんと勉強しろ。……俺が会いに来るから」
桐嶋は踏ん張りどころで、秋弘もまた新しい環境で踏ん張りどころだ。すぐ側にいなくても大丈夫だと不思議と思える。
「来年、絶対受かるから」
桐嶋の目指している大学は秋弘の戻る街にあるのだ。
――もうこれは幸せフラグだろ。
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