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「次はあなたが"鬼"」
そうして公園の外へ歩いていく彼女を、追いかけようとしたときでした。
私 の 影 が
あ り ま せ ん 。
日に背を向けているので、自分の目の前に現れるはずの影がまるで無く、私は"私だけ"が立っていました。
「うふふ、驚いたよね?」
そう彼女が振り向くと、持ち前の長い黒髪が、日照りによって艶やかに映り、ふわりと風に乗りました。
「これでおひさまも怖くないわ。だって私、影が"できた"んだもの。」
先程の歪なものではなく、誰もが魅了されるような笑顔です。
「ごめんね、ありがとう。多少小さいけど、そのうち丁度いい大きさになるだろうから我慢するわ。」
咄嗟に、彼女についている私の"影"を踏もうと走ります。
「あ、待って。"私の"を踏んでもダメよ?一度離れたら、もう一度なんてこと無理だもの。」
髪をかき上げて苦笑してみる彼女は、見た目は非常に美しいのですが、その時、本当は何を思っていたのかは、もう少し後になってわかりました。
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