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「大丈夫、"私と同じようにすれば"あなたも"影"ができるから。」
そうして近づき、頭を撫でてきたので、視線を足元へ移しました。
さっきまで私の"影"だったものが、彼女の動きに合わせて動きます。
さっきまで私の"影"だったものが、彼女から伸び、私を"ついでに"覆いました。
「次はあなたの番。」
さっきまで私の"影"だったものが、彼女と合わせて私から離れます。
「あ、おひさまの下はダメよ?影が無いのがバレちゃうから。」
彼女が公園の外に出ました。
此処まで見送るのは初めてのことでした。
「ごめんねー!もう"5時"になっちゃった!帰るわよーー?!」
後ろのほうから母の声が聞こえます。
「じゃあね。さようなら。」
軽く私に手を振って別れを告げる彼女は、おそらくもう二度と会うことはないでしょう。
実際、未だに彼女の居所どころか、名前すらわかりません。
帰路はとにかく恐怖でした。
母は当然のこと、周囲を行き交う人たちが影の無い自分に気付いたり、異様に思われ嫌われるかもしれないという不安もありましたので。
まして、影が伸びる夕方です。
この出来事から、日々、不安と恐怖に押しつぶされそうになり今まで生きてきました。
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