1人が本棚に入れています
本棚に追加
女は歩いていた。
ハイヒールをかつかつと響かせ自己主張するように勇み足で。
その女の爪先が固い何かに当たり、女は派手に転んだ。
足は痛み、思わずついた手は擦り傷だらけ、髪はボサボサになり、それは哀れだった。
どうして、アタシばっかり!
女は、先程のことを思いだし地面を叩いた。
女は、男に会いに行った。
男のアパートで呼び鈴を鳴らしたが留守だった。
仕方なく帰ろうとしたとき、男は戻ってきた。
隣には可憐な花が笑っていた。
女は、嫉妬のあまり男をひっぱたくと、ヒールを鳴らしてその場を後にした。
そして、今、女は道端に倒れ混んで踞っている。
引っ掻けた爪先の場所に緑がかった石が。
コイツのせいで!
女は石を掴むと地面に叩きつけた。
石は、乾いた音をたて、転がり、止まった。
女は立ち上がると今度は、その石を蹴りつけた。
石は、また乾いた音をたて転がり、止まった。
何度も何度も女は石を蹴りつけた。
石は、何度も何度も乾いた音をたて、転がり、そして、
砕けた。
砕けた破片が女の胸に突き刺さり、女はその場に崩れ落ちた。
体が硬化する。
爪が
皮膚が
髪の毛が
ミシミシと音をたて固まっていく。
心臓も
脳も
全てが硬くなる。
そうして、女はひとつの石になった。
嫉妬の色を帯びた石に。
道端に転がるだけの石に。
最初のコメントを投稿しよう!