傲慢の種

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女は歩いていた。 ハイヒールをかつかつと響かせ自己主張するように勇み足で。 その女の爪先が固い何かに当たり、女は派手に転んだ。 足は痛み、思わずついた手は擦り傷だらけ、髪はボサボサになり、それは哀れだった。 どうして、アタシばっかり! 女は、先程のことを思いだし地面を叩いた。 女は、男に会いに行った。 男のアパートで呼び鈴を鳴らしたが留守だった。 仕方なく帰ろうとしたとき、男は戻ってきた。 隣には可憐な花が笑っていた。 女は、嫉妬のあまり男をひっぱたくと、ヒールを鳴らしてその場を後にした。 そして、今、女は道端に倒れ混んで踞っている。 引っ掻けた爪先の場所に緑がかった石が。 コイツのせいで! 女は石を掴むと地面に叩きつけた。 石は、乾いた音をたて、転がり、止まった。 女は立ち上がると今度は、その石を蹴りつけた。 石は、また乾いた音をたて転がり、止まった。 何度も何度も女は石を蹴りつけた。 石は、何度も何度も乾いた音をたて、転がり、そして、 砕けた。 砕けた破片が女の胸に突き刺さり、女はその場に崩れ落ちた。 体が硬化する。 爪が 皮膚が 髪の毛が ミシミシと音をたて固まっていく。 心臓も 脳も 全てが硬くなる。 そうして、女はひとつの石になった。 嫉妬の色を帯びた石に。 道端に転がるだけの石に。
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