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なんとなく空を見上げる。
ヘルメットのシールド越しに見た空は灰色で、手を伸ばせば届きそうなほど低かった。
それは比喩なんかじゃない。
実際、空までは二百メートルほどしかないんだ。
爽やかな青色...に塗られた人工の空、その空と地面に挟まれるように建てられた個性のないビル。
俺はこの景色しか知らない。生まれてからずっとこの狭苦しい空の下で暮らしている。
300年以上前、日本人はこの空の上、つまり地上で生活をしていたという。大量の水に囲まれた小さな島国で生活を送り、さらにその水の向こうには大陸があり、わけの分からない言葉をしゃべる人間がたくさんいたらしい。
とある学者がテレビで言っていた。地上では空がずっと続いていて、地球は丸く、水と陸でどこまでも繋がっていたと。
そういえば最近見なくなったな、あの学者。
そんな謎多き地上で、ある日突然とてつもない規模の大地震が起きる。
小さな島国だった日本は数日のうちに崩壊した。ビルの何倍もある土の塊が崩れ落ち街を襲い、国を潤わしていた大量の水が人々を飲み込んだという。
そのまま消滅すると思われていた日本だが、当時の政府が極秘で開発していた地下施設に、生存した数百人を避難させた。
それが今の俺達の祖先。
.....といわれている。
こんな荒唐無稽な話じゃ説明にならないかもしれない。
要するに俺は知らないんだ。
日本が何で出来ているのか
自分が何で出来ているのか
この空が...街が...生き物が...何ができているのかを知らないんだ。
知らないことは罪じゃない。知らないことこそが罰なんだ。
俺はこの世界を知らなすぎる。
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