ある晴れた昼下がり

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まずはこの地図が何処を描いたものなのか。ヒントになるのは右手に海があり、その海沿いに電車が走っているということだけ。あとは所々に何か赤い点が打ってあるけど、それがはたして何なのか皆目見当も付かない。そして一際目を引く大きな赤い点、ここに一体何があるというのか。 ねぇ、母さん。この地図にどんな想いが込められているの?その問いに答える声はもう聞こえないけれど。 母さんの生まれ故郷を踏みしめる。ここに海はないけれど、なんの手掛かりもない私は母の実家を訪ねることにしたのだ。今は母の姉が住んでいる。 「よく来たね、いらっしゃい」 「先日はありがとうございました」 「妹の葬式に出るなんてね、長生きも考えものだ」 そう笑って迎え入れてくれた伯母は、母が実家に置いていったものが仕舞ってある蔵に案内してくれた。埃くさいこの場所は、まだ祖父が生きていたころ何度も入ったことがある。ここにある、祖父が描いた絵画たちを眺めながら祖父の話しを聞くのが大好きだった。 (この絵…) 深い深い青の海。これは女系のこの家に婿として来た祖父が、自分の生まれた土地の海だと語るのを聞きながら眺めていたのを思い出した。この海で採れる魚の美味いこと、と自慢気に話す祖父がどこか寂しそうで、子供心に祖父がいなくなりそうで怖くなった記憶がある。 母さんの面影を探しに来たはずなのに何故だろう、次の行き先はここに決めた。 「なんだい、泊まっていかないの?」 「また来ます」 名残惜しそうな伯母に別れを告げ、私は母の生まれ故郷を離れたのだった。
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