決行の日

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前に自分の初恋は幼稚園のときだと雄大が話していた。 砂場でスコップを貸してくれた子が、初恋の相手なんだと。 おいおい、それって俺のことか? なんて血の気が引いた。 雄大にスコップを貸すことは日常茶飯事だった。 自分のがあるくせに、人の物が良く見えて欲しくなる雄大。 彼が駄々を捏ねるたびにスコップやバケツを貸してやったのは俺だ。もしくは姉ちゃん。 あれ? もしかして? と思ったのは、その時だ。 雄大は甘え上手で、姉には特に懐いていた。姉もそんな雄大をかわいがっていた。 俺とは真逆のアプローチ。 俺は姉に頼られる男になりたいから、姉に甘えたりはしない。 しっかり者の姉が甘えたくなる唯一の存在になるために、勉強もスポーツも頑張ったし家の事も積極的にやった。 雄大のやり方よりも俺のやり方のほうが正しいはず。 父を説得できるかは自信がないけど、このまま手をこまねいて姉を奪われるのは真っ平御免だ。 茨城県の田園地帯に住む俺にとって、東京は大都会だ。 中学生が立ち向かうには1人では心細い。 雄大は弱虫だけど、友だちを見捨てるような薄情な奴じゃない。 だから、俺は雄大と一緒に行くことにした。 よりによって、決行の日は雨だった。 朝、部活に行く振りをして、雄大の家で待機。 姉が出かけたのを確認してから一旦家に戻り、体操服から都会っぽい(と自分では思う)私服に着替えて出発した。 心配をかけないように、『雄大と旅に出る』という置手紙を残して。
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