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あれは1学期の期末試験の前だった。
近くに住む幼馴染の雄大の家で一緒に試験勉強をしていると、雄大が教科書を机に放り投げて言い出した。
「涼介、俺、見ちゃった。美弥姉が外車の助手席に乗り込むとこ」
「どこで? 人違いじゃないか?」
幼稚園からの仲良しの雄大は俺の姉ともよく一緒に遊んだから、小さい頃から『美弥姉』と呼んでいる。
「美弥姉を俺が見間違えるはずないよ。それに、涼介の家の前だったんだから、あれは間違いなく美弥姉だ」
「運転席は見た? どんな奴だった?」
真っ先に思ったのは、姉が大学生と付き合いだしたんじゃないかということ。
高3にもなれば恋人ができてもおかしくないし、その相手が卒業した先輩だということもありうる。
女の先輩でありますようにと祈った俺に、雄大は衝撃的な事実を告げた。
「よく見えなかったけど、おじさんみたいだった」
「おじさんって、親父?」
「うん」
「まさか⁉」
「でも、そうじゃなきゃ男の車に乗り込んだりしないよ、美弥姉は」
どっちがショックだろう。
姉に恋人が出来るのと、姉が父親にこっそり会っているのとでは。
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