家の事情

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事の真偽を姉に問い質すことも出来ないまま受けた期末試験は散々だった。 落ち込む俺に追い打ちをかけたのは他ならぬ姉だった。 姉が思いつめたような顔で母に切り出したのだ。 東京の大学に行きたいと。 I大よりもレベルの高い大学を目指したい。東京での生活に憧れる。 そんな嘘臭い理由を母は信じたようだが、俺は騙されなかった。 やっぱり雄大が見たのは父だったんだ。 家を出て行った父がどこで何をしているのかなんて、知らなかったし知りたいとも思わなかった。 どうせ女のヒモみたいな暮らしをしているんだろう。そう思っていた。 父の実家は裕福だったが、高校生のときに母を妊娠させた父は、勘当されて高校を中退したと聞いている。 だから、俺も姉も祖父母に会ったことはない。 てっきり、勘当されたままだと思っていたけど、もしかしたら勘当を解かれて外車を乗り回すような生活をしているのかもしれない。東京で。 父が姉に会いに来て、東京で一緒に暮らそうと誘ったのか? 姉は母にそうとは言えないから、東京の大学に行きたいなんて言い出したに違いない。 父はどうしようもない浮気男だった。 その整った外見に惹かれて、女がひっきりなしに群がってくる。 それを片っ端から食い散らかすような最低な男。 そんな父が唯一本気で愛したのが、俺たちの母だった。 父はいつまでも子どもっぽい愛情で母を独り占めしたがっていたけど、母は父の”女”である前に俺たちの母親であろうとした。当たり前だ。 そんな母の気を引きたくて、父は愚かにも浮気を繰り返した。 母は俺たちを育てるために父の浮気に耐えていたが、ある日、浮気現場に出くわしてしまい、ついに愛想を尽かした。 修羅場に居合わせた姉から聞いた話だから間違いない。 その夜、父は俺たちを置いて家を出て行った。 俺が小学校3年の時のことだ。 正直、父のことはよく覚えていないけど、母がよく怒鳴って泣いていたのは覚えている。 姉は若いころの母に似ているらしい。 だから、父は姉だけを迎えに来たのかもしれない。
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