最終話

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 食事を終えて少し休憩をしてから、  2人で外出する。  これから区役所に2人の婚姻届を提出しに行く。  私達は今日正式に夫婦になる。  たった1枚の紙切れで、  他人から家族になるなんて、  フシギ。 「本当にタクシーで行かなくていいのか?体調は大丈夫か?平気なのか?」 「心配性ー。区役所近いし、私運動不足だし、天気いいし、歩いて行きたい」 「絶対無理はするな、お前1人の体じゃないんだ。俺1人で行って来てもいいんだぞ?」 「尚人、心配し過ぎ」  呆れるほど心配し過ぎてる相手を放置して、  玄関の扉を開けてさっさと外に出る。  8月中旬、盛夏。  空にくっきりと入道雲。  今日は適度な風が吹いているためか、  夏の蒸し暑さはあまり感じない。  買ったばかりのマタニティ仕様の、  膝丈ワンピースの裾が風にフワリ揺れる。 「ねぇ、今日区役所の帰りにパン屋に寄ってパン買ってもいい?あのね、私の赤ちゃんはコロッケパンが大好きなの」  さり気なく車道側を歩いてくれる、  隣の長身カレにそう言うと、  不意に足が止まる。  そして凛とした声音で不服を訴えた。 「薫。何度も言ってるが、お腹のその子は『私達の赤ちゃん』だ。発言の撤回と訂正を要求する」 「なんで?私のお腹の中にいるんだから、私の赤ちゃんだよ。間違えてない」 「断固違う」
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