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栞を外してしまわないように気をつけながら、遼が、本をぺらぺらめくる。
その顔が、次第に赤くなっていった。
「お前、これ、随分アレだぞ」
「アレって?」
「なんというか、誇大妄想というか、希望的観測?」
「え?」
「サイズひとつとっても……」
遼の手元を、豪太はのぞき込んだ。
「……」
「……」
「モーリス出版社」
再び本を裏返し、遼がつぶやいた。
「その会社、ずいぶんなブラックかもしれないな。気をつけろよ」
「だ、大丈夫だよ。ボス弁もついてるし」
「豪太」
遼が、初めて豪太のことを、名前で呼んだ。
そのことに気がつき、はっとして、豪太は遼を見た。
遼は、本を脇に置き、手を伸ばした。
豪太の頭を胸に抱き寄せ、耳元で囁く。
「俺、この頃気がついたんだ。好きなやつとやるから、気持ちがいいんだ、って」
胸の中で豪太が何かもごもご言っている。
「何?」
豪太が、紅潮した顔を上げた。
目が、きらきら光っている。
必死な声で、訴えた。
「モーリス出版の社長さんにけしかけられたからじゃない。僕は、毎晩、したい。あなたと毎晩、したいんだ。昼間でも構わない。顔を見たら、いつだって、したい」
「お前な、」
「一緒に暮らそう、遼さん」
「この流れでそれを言うか」
「好き好き好き。大好き、遼さん」
「……」
両頬を挟んで、遼はその唇にキスをした。
fin
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