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切羽詰まった表情で、豪太がぐっと近づいてきた。
「大丈夫、遼さん? 変なイタズラとか、されてない?」
「俺に変なイタズラを仕掛けてくるのは、お前くらいのもんだ」
「そうか」
豪太は満足そうに笑った。
「なら、夢、見たんだ。無防備に酔っぱらったあなたを前にして、何もしないやつなんか、この世の中に、いっこないもん」
だが、遼は納得がいかなかった。
「あんなリアルな夢があるもんか。彼女、確かにこの部屋の合鍵を持ってるって言ってたし。この部屋の住人が恋人で、そいつに捨てられた、って話して。もちろんそれは、豪太じゃなくて……」
「遼さん!」
びっくりするほど真剣な声を、豪太が出した。
「その女性、この部屋の前の住人の、彼女だったってこと?」
「うん。そうらしい」
不意に豪太が立ちあがった。
奥の部屋へ行って、何か持ってきた。
古ぼけた写真だった。
「その彼女って、この人?」
「ああ、この人、この人。この隣のが、元カレ、つまり、この部屋の元の住人だよな。てか、どうしたんだ、この写真」
それは、ゆうべ遼が、彼女から見せられた写真だった。
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