1 顔を見たら

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 「待って。待ってよ、遼さん!」 後ろから豪太が追いかけてくる。 「せっかく会えたのに。ひどいよ」 「お前な、」 足を緩めず、遼は答えた。 「大勢の人の目の前で。恥ずかしいじゃないか」 「うん?」 「カフェ!」 「ああ、満席だったよ。席取るのに苦労した」 「そうじゃなくて!」  ようやく豪太は遼に追いついた。  すかさず、肩を抱こうとする。 「うわっ!」  遼は慌てて、その腕を逃れた。 「人が見るだろーが。お前はどうだか知らんが、俺は見世物じゃねえ。つーか、なんでここにいんだよ。今夜はうちに帰るって言ったろうが」  ゆうべもその前の晩も、こいつの家に泊まった。  そろそろ自宅に戻らないと、いろいろ差しつかえる。  きょときょとと、豪太の目が泳いだ。  「あー。それは、僕もたまたま、この辺で仕事があって、そしたらそこへちょうど、遼さんが、」 「お前、今日は、霞が関だって言ってなかったか?」 「そうだっけ?」 「言った。とぼけるな」
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