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「待って。待ってよ、遼さん!」
後ろから豪太が追いかけてくる。
「せっかく会えたのに。ひどいよ」
「お前な、」
足を緩めず、遼は答えた。
「大勢の人の目の前で。恥ずかしいじゃないか」
「うん?」
「カフェ!」
「ああ、満席だったよ。席取るのに苦労した」
「そうじゃなくて!」
ようやく豪太は遼に追いついた。
すかさず、肩を抱こうとする。
「うわっ!」
遼は慌てて、その腕を逃れた。
「人が見るだろーが。お前はどうだか知らんが、俺は見世物じゃねえ。つーか、なんでここにいんだよ。今夜はうちに帰るって言ったろうが」
ゆうべもその前の晩も、こいつの家に泊まった。
そろそろ自宅に戻らないと、いろいろ差しつかえる。
きょときょとと、豪太の目が泳いだ。
「あー。それは、僕もたまたま、この辺で仕事があって、そしたらそこへちょうど、遼さんが、」
「お前、今日は、霞が関だって言ってなかったか?」
「そうだっけ?」
「言った。とぼけるな」
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