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「嘘だね」
「は?」
「お前、何、嘘、ついてんだ? そんな、自殺とか、事故物件とか、」
「嘘じゃないよ」
「いいや、嘘だ。だって、ほら、お前のすぐ後ろに立ってるじゃないか」
「立ってる? 誰が」
「彼女」
反射的に豪太は後ろを振り返った。
「……誰もいないよ」
しかし、遼の目には、はっきりと、髪の長い女性の姿が見えた。
おもしろそうにころころ笑いながら、豪太のすぐ後ろにいる。
「あんた、二日酔いは大丈夫か?」
あんまり屈託なく笑うものだから、思わず遼は問いかけた。
「俺より飲んでたろ?」
「は? 遼さん、何言って……?」
「わりぃ、豪太。お前に無断で女性を泊めちまったのは、悪かったよ。でも、まさか夜中に放り出すわけにもいかねえだろ? 失恋して泣いてんのに」
「ちょっと遼さん、しっかりしてよ」
「う、大声出すな。俺は、しっかり二日酔いだ。……あんた、強いんだな。酒に強い女は、いいねえ」
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