2 瑕疵物件

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 「誰もいないじゃないか!」 殆ど悲鳴のように、豪太は叫んだ。 「ここには誰もいないよ。僕とあなたの他に!」 「お前、それは失礼だろ……」  女性の笑いが消えた。  むっとしたように、豪太を睨んでいる。 「ほら、彼女、怒ってる」 「遼さん! 遼さん!」 豪太が遼の肩をつかんだ。 「ちょ、なんだ、人前で」 「だからここには、僕とあんたしかいないっ!」 「いるだろ……」 豪太がいきなり、遼の口を塞いだ。 「……っ、……っ」  性急に舌が割り込んでくる。  突き放そうとしても、後頭部を抱え込み、離そうとしない。  驚きや恥ずかしさや、面目なさやなにやらで、遼は、途方に暮れてしまった。  混乱した気持ちのまま、豪太の顔の下から、そっと女性の顔を盗み見る。  意外なことに、彼女は微笑んでいた。  微笑んで遼にうなずき掛けると、唇の動きだけで伝えた。 「か・え・る……」 「……っ!」 遼は、やっとのことで、豪太を引き離した。 「……ほらっ! お前が無体なことすっから、……彼女、居たたまれなくなってんぞ。もう、帰るってさ」 息を途切らせながら言った。
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