2 瑕疵物件

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「遼さんが幽霊を見た話をしたら、部屋の修復費はいいから、って」 嬉しそうに、豪太が笑った。 「でも結局、部屋は明け渡さなくちゃなんねえんだろ?」 豪太の前にコーヒーを置いてやりながら、遼が言う。 「どうすんだよ、お前」 「ここにおいて」 「いやだよ。狭いもの」 「狭いから、いいんじゃん。いつも身近に遼さんがいて、手を伸ばせばすぐそこに、」 「昼間っから、何すんだ!」 伸びてきた手を、遼は叩き落とした。 「ひどっ」 「真面目に考えろ。こっからだと、お前の職場には遠いじゃないか。乗り換えだって多いし、通勤が大変になるだろ?」  遼が真顔で諭すと、豪太は首を竦めた。 「実はね。遼さんと僕の職場の真ん中あたりに、考えてる物件が二件、あるんだよ。一軒はそれなりの家賃なんだけど、もう一軒は格安」 「格安? お前、それ、まさか、」 「うん」 「うん、って! 懲りない奴だな。ダメだ。それはダメ」 「僕だってヤだよ! だって遼さん、引き寄せ過ぎだもん。あのね。たとえ幽霊だって、僕は、遼さんに近づけたくないの! あなたは僕のもんなんだからっ!」 「じゃ、その部屋は、却下」 「そんなこと言ったって、家賃の高い方は、無理だよ。イソ弁の出戻りじゃ、給料も大したことないし。困ったなあ」 ちらりと遼の顔を見る。
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