98人が本棚に入れています
本棚に追加
「……なんとかしろよ」
「ルームメイトがいてくれたらいいんだけど」
「ルームメイト?」
「恋人とか」
「……」
「そしたら、家賃、払える」
「俺をあてにするなよ。俺はお前と住む気はないから。もう、そこは諦めて、別のを探せ」
「えーー、いやだよ。せっかく探したんだもの、一緒に住もうよ」
「けじめが大事なのっ! あと、一緒に住んでたら、やり殺される気が……」
「気のせいだから」
「とにかく、だめだ」
「やっぱ、ダメか。じゃ、格安家賃の事故物件の方に……」
「ダメだ! ダメっつったら、ダメ!」
「大丈夫だよ。僕には何も、見えないし」
「……お前はいいよ? ニブいから。でも、俺にはちゃんと見えるんだよ!」
「幽霊がいたら怖いなんて、遼さん、|カワイイ(かぁいっ)! でも、よかった。何があっても、どこに住んでても、遼さんは、僕のとこに来てくれるんだね!」
「何、呑気なこと、言ってんだよっ! 幽霊だぞ、幽霊!」
「平気だよ。僕がついてる」
「お前なんか、」
「うん、それ、いい考えだ。格安家賃でお金を貯めて、早く二人のスィートホームを、」
「はあ?」
「赤い屋根に白い壁、狭くていいから、庭も欲しいな」
「庭? 馬鹿か、お前は。いったい誰が手入れするんだ?」
「二人きりじゃないってのは、ちょっとヤだけど。でもうるさい姑小姑より、幽霊の方が、なんぼかマシ」
「俺はいやだぞ。いくらお前がニブくたって、相手は、この世のモノじゃないんだぞ? 水ぶっかけられるくらいで済めばいいけど、間違えて祟られちゃったら、どうする気だ? お前には、|見えない(傍点)んだから、幽霊のどういう恨みを買うことか、」
「じゃ、出ない方の部屋にするね」
「うん、そっちのがいい……」
「決まりっ!」
はっと、遼が顔を上げた。
「俺は、一緒に住むとは一言も……」
「嬉しいなあ。やっと、遼さんと一緒に住めるんだ!」
最後まで言わせず、豪太は、遼を抱きしめた。
fin
最初のコメントを投稿しよう!