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お盆の入りの日。
海の見える墓地には、あちこちに、墓参りに来た人の姿が見えた。
暑い日だった。
遼は、墓石に水をかけ、花を手向けた。
缶ビールのプルタブを上げ、一つ供えてから、もうひとつは、自分で飲む。
お茶とか水とか、蒼にはつまらないような気がして。
甘いお菓子も、よほど疲れた時しか、口にしなかった。
……随分ストイックに、お前、生きてたんだな。
お盆の十三日には、家族が、墓参りをする。
そしてお盆の間中、蒼は実家に帰ってしまう。
だから、遼は毎年、12日に、蒼の墓に来ていた。
命日と同じように、一日早い、墓参り。
……家族の気持ちを考えたら、とてもじゃないけど、顔を合わせることはできない。
……蒼を過労死させた会社の、自分は、社員だったのだから。
だが、今年は、13日、死者の霊が帰って来る日に来た。
豪太が、是非、そうするべきだと言ったのだ。
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