1 顔を見たら

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 「だって、金曜の夜だよ?」 不意に、豪太の声が裏返った。 「は? だから?」 「あなたと一緒に、帰りたかったんだよ」  有無を言わさず、遼の腕を捉えた。  逃げようとするのを、むりやり掻い込み、手を握る。 「ね、ね、遼さん。一緒に帰ろ」 「いやだ。うちに、帰る」 「ダメ。離さない」  5本の指を開いて、遼の指に絡めてくる。 「こっ、これはいやだ」 「なんで。恋人つなぎだよ」 「恥ずかしすぎる」 「だいじょぶ。人が多すぎて、誰も見てないから。それか、見ないふりをしてくれる」 「お前な、」 「恋人でしょ?」  自分の頭より高い位置でそう言われ、遼はうつむいた。  しおしおとつぶやく。 「だってこれ、いかにも、やりました、ってふうに見えないか?」 「なんだよ、それ。見えないよ」 「もしくは、これからやります、みたいな?」  遼の手を握ったまま、豪太は立ち止った。  しげしげと顔をのぞき込む。 「だって、その通りじゃん」
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