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「だって、金曜の夜だよ?」
不意に、豪太の声が裏返った。
「は? だから?」
「あなたと一緒に、帰りたかったんだよ」
有無を言わさず、遼の腕を捉えた。
逃げようとするのを、むりやり掻い込み、手を握る。
「ね、ね、遼さん。一緒に帰ろ」
「いやだ。うちに、帰る」
「ダメ。離さない」
5本の指を開いて、遼の指に絡めてくる。
「こっ、これはいやだ」
「なんで。恋人つなぎだよ」
「恥ずかしすぎる」
「だいじょぶ。人が多すぎて、誰も見てないから。それか、見ないふりをしてくれる」
「お前な、」
「恋人でしょ?」
自分の頭より高い位置でそう言われ、遼はうつむいた。
しおしおとつぶやく。
「だってこれ、いかにも、やりました、ってふうに見えないか?」
「なんだよ、それ。見えないよ」
「もしくは、これからやります、みたいな?」
遼の手を握ったまま、豪太は立ち止った。
しげしげと顔をのぞき込む。
「だって、その通りじゃん」
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