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「何とかしないといけないわ、
絶対あの子を死なせる訳にはいかない、
何とかしないと、
何とか・・・」
澤田紀子はパニック状態になって何度も叫んだ。
澤田紀子、
37歳、
二年前一人息子の幸一が中学三年の時、
紀子は交通事故で死亡した。
梅雨の土砂降りの日の夕方、
買い物を急いでいた紀子は
道路を横切ろうとして暴走してきた車に跳ねられた。
即死だった。
気が付いたのは紀子の葬儀の最中だった。
自分の葬儀を見ているのだが何故か平静だった。
泣いている幸一を見て紀子は我に返った。
「幸一泣かないで、
母さんここにいるから・・・」
笑顔で幸一に近付いて腕を取ろうとしたができなかった。
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