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大声で幸一を呼んでみても聞こえていなかった。
ああ、
きっと私は悪い夢を見ているんだと理解しようとした。
紀子は自分が死んだのだと覚悟するまでには時間がかかった。
あまりにもやり残した事や将来の夢があったからだ。
それを一つ一つ抹消し、
諦めるのには時間が掛かった。
悔しかった。
紀子と幸一は小さな家で祖母と三人で暮らしていた。
夫は5年前に病気で亡くした。
紀子は夫の分まで懸命に働き少しでも幸一を元気付けようと頑張った。
幸一は大人しく内向的な性格だった。
背は低く細身で本を読むのが好きな空想家だった。
いつもせわしなく幸一に接する紀子とは時には
口喧嘩もするが、
祖母春子とは仲が良かった。
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