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「お、いらっしゃい!! お客さん!」
街の大通りの片隅に屋台のような店があった。道に接しているカウンターに幾つかの椅子が置かれている。屋台というよりかは野外にある喫茶店 といった様相である。なかなか繁盛しているようで空席は目立っていない。そんな店に先程の少年はやってきた。
「すみません、何か飲み物を一杯」
「はいよ。酒でいいかい?」
「いや、まだ昼間なので」
「ガッハッハ! 冗談だって!!」
なかなかに威勢がいい店主のようだ。この店を一人で切り盛りしているだけのことはあるだろう。
その店主は勢いよく少年の背中を叩いてきたため、少年は一瞬息が止まってしまう。
そうして店主は一杯の飲み物を少年へと手渡す。
「ほらよ」
「……けほっ……あ、ありがとうございます」
ゴクッ、と一口。少年はその飲み物を飲み感想を述べる。
「あ、おいしい! これ、すごくおいしいですね」
「そうだろそうだろ! この街の水で作った、天然の炭酸水だ。旨いだろ?」
「はい、このシュワッとした感じがいいですね」
「うんうん、兄ちゃん。なかなか話が分かるじゃねえか。兄ちゃんは旅人かい? 旅人にしとくには勿体ねえなあ」
「いや、そんな……」
と、少年が店主とそんな談笑をしていると腰に据えてある剣が囁きだした。
『……ねえねえ』
「ん? なんだよ?」
『ちょっとだけさ、飲ませてよ、それ』
「はあ? なに言ってんだお前。お前は剣じゃねえか。いいから、ちょっと黙ってろって。お前が喋れるって分かったらいろいろ面倒だからよ」
『ちぇっ。僕も飲みたかったのに』
「……どうかしたのかい?」
「い、いやあ、別になんでもないです」
なんとか相棒を黙らせて少年は店主との会話に戻る。
「最近は、兄ちゃんみたいな旅人が増えてきてねえ。これもあの『元』国王様のお陰だよな」
「あぁ……『カルロスの政変』ですか」
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