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少年がそこに着くと、そこにはもう既に人だかりができていた。店主に頼まれていた少女の姿はそこには無い。猛り立つ人々の声が漏れてくる。
(まずいな……)
この人が多いところであんな小さい子を見失ってしまえば、また見つけるのはかなり困難だろう。
少年はそう思い、なんとか人だかりの上から中の様子を観察しようとするが――
『……ねえ』
「なんだよ、カロン」
『絶対無理でしょ。背、そんな大きくないんだし』
「うっせえな! いちいちそこにつっこむな!」
少年は相棒である剣に向かってそう吐き捨てるように言うと、学習したのだろうか人を掻き分けて中へと進入していく。
(最初からこうすりゃよかったぜ)
少年はなんとか人によって創り出された円の内側に入ることができた。
「――放せ! 放せよ! 俺が何をしたってんだ」
「ええい、黙れ小僧っ!! 少し大人しくするんだ!」
「放せーっ! 俺は行かなきゃいけないんだ」
少年の、彼の目に入ってきた光景は大体が予想通りのものだった。
一人のみすぼらしい少年が、槍を持ち鎧を身に纏う男達に拘束されていた。少年はなんとか逃げ出そうとするが、そんなことができるはずも無い。
背の高さ、力、どれをとっても劣っている少年が逃げ出せる理由が無かった。
「フフフ、弱い獣はよく吼えると聞くが、まさにこのことだな~」
兵士達の後ろから、一人の男が現れた。
醜い豚、彼が感じた第一印象はこの一言に尽きた。
少し小太りなその男は無駄に宝石を詰め込んだ服、歯は全てが金歯に差し替えてあり、指にはとても大きな宝石の指輪が付けられている。
装飾されたその男の服装は決して綺麗とはいえないものだった。
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