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『わたしが』
風が、吹く。
『わたしがこの国を変えるわ』
一陣の風が指揮をして、草花が歌いだす。少女は、草花の絨毯に腰を下ろしながら物語を語りだすように、あるいは旅立ちの決意を述べるように声を発した。
一面の草花、自然がそのまま切り取られた此処は、とある屋敷の庭の一角。この少女達だけにとっては広すぎる。
『そうしたら、そうしたらあなたはわたしと一緒に戦ってくれる?』
少女は尋ねる。隣に座っている人物に対して。少女の風采は幼いながらも確かに上流階級の者特有の気品を感じる。凛とした表情からは、外見だけでなく内面までが高貴なのだ ということが分かる。貴族とは貴い者のことだ。まさにこの少女のことだろう。
『あたりまえじゃん』
あくまで、笑顔で。
『いつまでも、俺はお前の味方だよ』
少女の隣にいた人物、少年はそう答えた。歳は四、五歳くらいだろうか。活発な印象を与えるその声音とは裏腹に、その服装からは彼が、少女程ではないにしろ高貴な身分である事が伺える。友達と遊ぶときのような声で、だが、表情は幼さを感じさせない。そんな様子で少年は少女に回答する。
『……ありがとう』
草花の演奏は、まだ続きそうである――
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