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そう、ここは貴族院。国の行く末を占う政がこの場所で行われているのだ。この国『アルディメント』は、長年統治の姿勢として絶対王政の名の下に中央集権の様相で進められてきた。当然、このような形をとれば身分制度は必然的に身分制の方向へと流れていき、貧富の差や、差別が起こるのも必然だ。
『絶対王政』とは言うが、王権が絶対であった というわけではない。それは、ここに大勢いる貴族の人間の統治に対する協力に裏打ちされていたからだ。
「では、まず初めに国王であるカルロス・フォン・アルディメント様よりお言葉があります」
議長がそう告げると、一人の男が議長席の前部に設けられた発言席へと歩いてくる。
――足音は、静かに、速く重く。
――身なりは、飾りすぎず、だが、誰よりも煌びやかに。
王、と呼ばれたその男。いや青年は王冠など載いてはいなかった。
頼り甲斐のある男というよりは爽やかな好青年、という言葉が似合うだろうか。顔の彫りは深く、目は綺麗な二重で、長い睫毛が色の薄い瞳にかかっていた。
――表情は、凛と、そして強い。
「皆のもの、よく来てくれた。今日来てもらったのは他でもない。私からある宣言があったからだ」
――声は、大きく、力強く。
王による発言を皮切りにこの建築物の中に堰を切ったように囁き声が交わされ始める。ここにいる『貴族』と呼ばれる人間は皆、典型的な利己主義者なのだ。いつでも考えているのは、自分にとっての利益。王とはそれを生み出すための媒体にすぎない、王による勝手な行動などはもってのほかだった。
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