小さな一歩

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
屋根のてっぺんでアクビをして丸まる猫を見つけた。 景色のいい高原で爽やかな風を浴びながらアイスクリームを食べたら、美味しいだろうなぁ。 住宅の隙間に出来た獣道を散歩する猫のお尻を見ていたら、こちらを向いたレディに小さな鼻であしらわれた。 暗いトンネルを警戒しながら通り抜けるスリルは、ヒヤリと背中を冷やすだろうな。 空き家となっているはずの古い家屋の窓に、チラッと白い猫の姿を見た。 ホラーハウスを探検して、お宝を奪取するのも……怖い、怖いけどきっとそのドキドキと恐怖感を乗り越えた時の達成感は、とんでもない快感だろう。 誰とも知れない人間の所有する車のボンネットで、ゴロリゴロリと体をこすりつける猫を見つけた。 ヒッチハイクでどこまで行けるか、様々な出会いをめぐるのも、内面の成長を促して今後の人生にきっと、役に立つ。 そう、旅は人生の糧となる。 だから旅に出た。 心身ともに成長するために。 だから旅に出た。 人とのふれあいを経て、心を磨くために。 だけど、もう帰ってきたんだ。 もう終わった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!