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「……人、怖い……」
そもそも、対人恐怖症で引きこもりで、インドア派で運動音痴、喋るのも苦手な僕は、いつも部屋の窓から自由にのびのびと過ごす猫を見ているだけだった。
旅というものは僕にとっては夢で、現実に僕の足が道を歩く事はなく、誰とも話さない。
ゲームの世界でなら、どんなところにでも行った。どこへでも旅ができた。
それが羨ましくなって……テレビの画面の中を小さな箱の中のどこまでも広がる世界を、縦横無尽に駆け回るキャラクターが羨ましくなって……。
気の迷いだ。
僕は、部屋から出た。
靴を履き、外へ出た。
旅への一歩だった。
自由な猫に憧れた。
だから旅に……。
一歩、家の敷地を出た、それだけだった。
なのに、たまたま歩いていたらしい人達が、僕を見る。
視線が、視線が、視線が向かってくる。
なにもしていないのに……なにもしていないから?
僕が、引きこもりだから?
僕の旅は終わった。
「もう、どこにもいかない……」
静かに玄関のドアを閉めた僕が最後に見たのは、小さな鼻で笑う猫だった。
*end*
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