オーロラダンスに伝言を

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 また死にたいと強く願う。だから旅に出たの。  独りになりたいからオフシーズンを選んだ。  この世に未練はない。  私の旅路は死出の道。  旅の終着地は彼岸の彼方──。  それなのに馴れ馴れしく声をかけられた。 「火神(かがみ)さん、ちょっと待ってください」  気がめいる。  私が無言で抗議しても声はやまない。 「1人で行動しては危ないですよ」  怒りを募らせ足を止めると、 「ああ。やっと止まってくれましたね」  男は満面の笑顔で近づいてきた。  私的領域に易々と侵入してくる。  この一方通行な優しさがムカつくのよ。 「あれっ、怒っていますか?」  男がお人好しな笑みで訊いた。 「……案内、頼んでいませんが」 「いやいや、火神さんは大事なお客さまですから」 「独りにさせてくれませんか?」 「星がキレイで静かな夜ですからね」  答えにならないことを言うと、また男は後をつけてくる。  まったく頭にくる。  こんなところが、あいつに似ている。  あいつも歯車のズレたロマンチストだった。 「……何の用でしょうか?」 「お客さまの安全が第一ですから」 「また答えになっていない。あの……えーと……」 「水無瀬(みなせ)です。やっぱり名前覚えていませんでしたね」 「水無瀬さん、もうロッジに帰った方が良いですよ」
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