11人が本棚に入れています
本棚に追加
「この音は……!?」
「火神さん、何か聴こえるのですか?」
「風鳴りの……音のような…………これは何かしら」
「それはオーロラの音ですよ。地元の言い伝えでは、オーロラが現れる夜に不思議な音がすると言われています。
その音は聴こえる人と聴こえない人がいるので、単なる伝説だと思われていたのです」
「とても不思議な音……いいえ、まるで囁き声みたいに聴こえる。
これはオーロラの声みたいだわ!」
そう叫んだとき、ひときわハッキリとした声を聴いた。
その声はとても明瞭で、そして心に沁みる懐かしい声だった。
「あいつの声が、風間の声が聴こえたわ!!」
「ほ、本当ですか火神さん!? 彼は何と言ったのですか?」
「“ミフユ。僕の生命を託すから、君は倖せに生きてくれ”と、風間がたしかに言った」
それはあの白い世界で聞き逃した言葉だった。
私のこの生命は、彼から託されたものだったんだ。
たしかに寄り添う存在を全身で感じる。あの世界が満天に広がり、さざめきながら祝福していた。
そう思うとどうしようもなく目頭が熱くなって、止めどなく熱いものが溢れて流れる。
頭上で乱舞していたオーロラ爆発は、潮を引くように薄れてはかなく消えた。
私たちはオーロラが踊り終わった舞台を、飽きることなくいつまでも眺める。
「またオーロラ爆発はあるのかしら?」
「いつかまた、きっと見られると思いますよ」
「そう強く願うわ。今度はオーロラに風間への伝言を頼みたいから」
「それは何という伝言ですか?」
「それは……ふふっ、秘密です」
「それまで火神さんは待つのですか?」
「またオーロラ爆発が見られるまで待ちます。それで水無瀬さん、この近くに女性を雇うロッジはあるかしら?」
最初のコメントを投稿しよう!