運命の糸

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だが、そんな僕の運命の赤い糸を辿る旅は、突然終わりを迎える。小指から伸びた糸は天へと続き、それ以上辿る事が出来なかったのだ。さすがに僕も空は飛べない。この糸は誰に繋がっているのか…。 運命の相手は旅客機の客室乗務員、もしくは宇宙船の乗組員なのか…。いずれにしても旅はここで終わり、僕は天に伸びる糸を恨めしく見ていた…。 項垂れ、その場から動けないでいると、糸に変化があった。先程まで天に真っ直ぐに伸びていた糸が弛み、落ちてきたのだ。だが、糸が切れたわけでもなかった。 天から、小指に赤い糸を結んだ美しい女性が舞い降りてきた…。 運命の相手。 それは、旅を始めて僕が長く望んだ瞬間だった。大空を優雅に舞う為の綺麗な羽と、頭に金の輪を持つ美しい天女。僕の小指から伸びた赤い糸は、しっかりと天女の小指と繋がっている。僕の運命の相手は天女だったのだ。 天女が言った。 「はじめまして、私を探し求め旅をしてきた運命の人」 「ああ、なんという事だ。まさか僕の運命の相手があなたのような美しい天女だったなんて」 「私も嬉しいわ…、でも…」 天女は何故か浮かない様子だった。 「どうかしたのですか? 赤い糸で結ばれた者同士がこうして出逢えたのです。もっと喜びましょう」 「私も本当は喜びたいのだけど、私は天上人であなたは地上人、住む世界が違う二人は本来結ばれないの…」 「そ、そんな…」 せっかく運命の相手に逢えたというのに…。天女の言葉に目の前が真っ暗になる。 「でも、結ばれる方法なら一つだけあるわ」 「本当ですか!? それは一体どんな方法です」 すがる思いで尋ねる僕に、天女は言う。 「あなたが天上人になれば良いのよ。私達が結ばれる為に、さあ、早く死んで」
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