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木々が茂り、虫の鳴き声が輪唱を響かせる。道らしい道は無い。正真正銘の山の奥である。途絶えることのない虫の鳴き声が夏の自然を感じさせるが。
それを塗りつぶすかのように轟く声。
「伏せろキルコぉ!!!」
それに応えて。
「壮介もそこ! 危ない!!」
二人の人間が喉がはちきれんばかりに叫ぶ。
さらに。
それを踏み潰すかのように。
「見つけたぞ!! ぬしら、生きて帰れると思うでないぞ!!!」
幾数本もの木が倒壊する音と共に山の主が姿を現した。
死神キルコとその助手、壮介。二人はまさに絶体絶命、命の危険に晒されていた。
――――どうしてこうなった。
迫る死の気配から遠ざかろうとフル回転する脳の片隅で。壮介は記憶を掘り起こす。
事の発端はと言うと。やはり地獄で巻き起こる一連の事件に起因していた。
時は襲撃の直後に遡る。
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