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親愛なるサナへ
突然だけど、君にはいままで本当にお世話になった。
ぼくは君と過ごすことが大好きだった。だって、君と一緒にいると、おいしいパンが食べられるだろう? パンは、君が焼いたものが一番だ。本当に大好きなパンだ。世界一おいしいものだ。
別に、君との思い出がパンのことだけではないけれど、あまり書きすぎると紙がなくなってしまうから、思い出について語るのはやめておくよ。とりあえず、言いたかったのは、僕は君のことを嫌ってはいないということだ。
さて、君には僕が何故この家を出ていこうと思ったのか話しておくことにしよう。ああ、このことをくれぐれも他の人に話さないで欲しい。特にレイダおばさんにはね。彼女の口はなんでも拡散してしまうからさ。
僕の本当の名は、フェルナンド。王族だから苗字はない。
僕の目的は母を探すことだった。僕の母はね、変わり者なんだ。身分高い癖して、薬師の真似事して。ハナという偽名を使って世界を旅していたんだ。本当はエカチェリーナなんていういかにもお妃様みたいな名前のくせしてさ。
その母の消息を探していたんだ。まあ、これは知っているよね。この間までハナっていうスゴウデ薬師に弟子入りしたいなんて僕が話していたからね。
そして、一緒に薬師ハナのお墓を見つけてくれたもんね。ありがとう、サナ。母さんを見つけられて僕もほっとしたよ。
ぼくはこれからもっと危険な旅に出る。薬師ハナの敵討ちーーいや、父親を倒そうと思う。
何故って、それは、王宮で唯一の味方だった母を、薬師なんて汚らわしいとか言って殺した父親が許せないからさ。
母を殺された。だから、元凶を殺す為に旅へ出るって変だよな。でも、ぼくは自分の気持ちを止められなかった。
さて、書きすぎてしまったかな。
こんなこと書いて君は僕を嫌ってしまうかな。
ああ、なんだか君のパンが恋しくなってきたから、もう書くのを止めるよ。
じゃあね、サナ。
フィリより
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