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「何なんだよっ!! 俺と居るのが不満なのかっ!!」
そんな彼女にカッとなり、つい声を荒らげてしまう。
俺の感情は高ぶっていくのに、彼女は変わらず冷ややかな姿勢を崩さない。
「――――っ!!」
そして、遂には手をあげてしまう。
俺の拳が彼女の身体に当たり、彼女はソファから崩れ落ちてしまう。
息が荒くなり興奮の冷めない俺は、床に崩れる彼女を見下ろす。そして、彼女の腹を蹴りあげた。
彼女の軽い体が床を滑り、痛々しい音をたて壁にぶつかる。
それなのに、彼女は悲鳴ひとつあげない。
ただ、虚ろに俺の方を見ているだけだった。
「…………?」
足下にある光る物に気づき、視線を落とす。そして、しゃがみこみ、それを手に取った。
「……あ、……ああっ」
それは彼女の指から抜け落ちた結婚指輪だった。
以前はピッタリだったのに、今はこんなに簡単に指輪が抜け落ちてしまうほどに指が細くなってしまっていたのか……。
自分のしたことの残酷さに気づかされた俺は、駆け寄り彼女の体を抱き寄せた。恐ろしいほどに軽く、抱き締めれば折れてしまいそうなほどに細い。
「ごめん。……ごめんよ。こんな、酷いことをして……」
俺は彼女を抱き寄せ、一晩中泣いていた。
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