始まりは唐突に

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「っ、……」 目を見た瞬間に分かった。 こいつは悪いモノだ。 「宗介、逃げるぞ」 「へ?そんなやばいの?」 きょとんとしている宗介の手を掴んで入口から出ようとすると、 「ひっ!」 ガタガタと本棚が揺れ出す。 俺に言わせれば猫が飛び移って揺らしているだけだが、その猫自体がやばい。 真っ黒な体がぼやぼやと実態を留めずに揺らめいている。 バリンッッ!!! 「うわぁぁぁ!!」 「ちっ!」 蛍光灯までやられたか。 「おい、逃げるぞ……宗介?おいっ!くそ!」 しゃがみこんだ宗介を立たせようと思ったが反応がない。 こいつ気絶しやがった、くそ。 どうにか宗介をかついで脱出せねばと考えていると 『セン…セェ……ド、コ……?』 先生……?何のことだ? 「え……?」 黒猫の瞳から溢れたのは、 「泣いてん、のか?」 大粒の涙。
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