始まりは唐突に

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物心がつく頃には"それ"は俺のすぐ近くにいた。 姿はもちろん、声も聞こえた。 俺が望めば触れることすらできた。 幼い頃はそれがおかしいという自覚はなかった。 自分が異常だ、と認識したのは小学校中学年くらい。 特にこれといってキッカケがあったわけじゃない。 ただ周りの反応や視線から"それ"が見える事は、声が聞こえる事は、触れられる事は異常だと自分で判断した。 "それ"に良いモノと悪いモノがいると気づいたのは高学年になってから。 初めて悪いモノと出逢った。 恐怖、なんてもんじゃない。 身体の内側から蝕まれていくような、そんな感覚。 それから俺は今まではそれほど気にもしなかった"それ"にできるだけ関わらず、避けるようにした。 当然誰かに相談できるわけでもない。 馬鹿だってハブられるか、気持ち悪いって精神科に連れていかれるかだ。 だって普通におかしいだろ? 「俺、幽霊が見えます」 だなんて。
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